個人事業主の慰安旅行は経費なのか問題

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※Photo by Alex Perez on Unsplash

昨日まで一泊二日で、勤務先の慰安旅行に参加してきました。

独立して個人事業主になったら慰安旅行は認められるのだろうか?考えてみた。

 

法人と個人事業主では取り扱いが違う福利厚生費

そもそも論ですが、慰安旅行の勘定科目は何でしょうか?

一番しっくりくるのは、福利厚生費です。

 

福利厚生費は、従業員に対して使われる費用で、主なモノを列挙してみると、

住宅手当

家族手当

食事手当

健康診断費用

育児休暇

介護休暇

慶弔費

資格取得補助

社員旅行

などです。

 

法人が従業員に使う費用や手当であることが重要です。

本来の福利厚生費の趣旨は、

法人が勤務する者に対して、慰労や福祉を充実させて、

人材の確保や勤労意欲の維持・充実を図るのが目的です。

 

経費について考えるときは、この趣旨がポイントになるので、

意識しておく必要があります。

 

法人が従業員に対する福利厚生費を考える時には、いくつかポイントがあります。

 

・全ての従業員に対して平等に適用して支出すること。

→一部の特定の人物に対する福利厚生費は給与として認定されて所得税の課税対象になります。

 

・金額が社会的常識の範囲内である

→まあコレは難しい部分もありますが、何でもやり過ぎは禁物です。

例えば社員旅行でファーストクラスを使うとか。ドンペリを飲みまくるとか。

 

勘定科目が福利厚生費であってもなくても、実態で判断されますので、

例えば雑費で処理すれば問題ないというのは誤りです。

 

本来であれば勘定科目はその費目ごとに設定するのが原則ですが、

勘定科目は自由でも良いのです。

 

自由に設定できるからこそ、中身を、実態をチェックされます。

ここまでは法人のハナシ。

 

では個人事業主はどうかというと、

フリーランスで従業員を雇っておらず、自分一人で事業をしている場合

〔一部のひとり役員法人も該当します〕には、

従業員としての立場というのは、基本的に認められません。

(特に税務調査の時は、事業主としての調査になるので、

そこを争おうとすると、ある種負け戦になります)

 

これは家族経営で、専従者給与を支出している場合でも同様です。

家族に対して行われる福利厚生費は、プライベートの費用との区別が困難です。

 

区別が困難なものは、税務署からすると攻めやすい部分です。

税務調査の時に槍玉に上がるような【ネタ】は提供しないほうが賢明です。

 

交際費なら経費に出来るという論

では、個人事業主が仕事ではない、プライベートに近い主旨の旅行に行ったら

処理はどうなるのか?経費に出来るのか?誰と行けばよいのか?

よくある質問です。

 

前述のとおり、福利厚生費はムリなので、交際費で経費に出来る!と

イロイロなところで調べてきて、確認されることがあります。

 

例えば、専従者給与を支給している親族や同業者と行く旅行は?

 

ここでも交際費の趣旨をおさらいしましょう。

簡単に言うと、

利益を出すために必要な支出であるかどうか?

です。

 

特に、得意先や仕入先などの事業に関係する者との接待・饗応・慰安などの費用ですが、

要はビジネス関係がある人とのビジネス上のお付き合いに基づくモノですよね?ってこと。

 

なので、家族や親族の場合はムリですね。

だって、ビジネス関係ではなくて、家族と旅行に行ってるんでしょ?とみられます。

 

じゃあ、それが同業他社や得意先・仕入先などの

ビジネス関係に基づくひととならどうなるか?

 

これは結構ビミョーな問題です。

このビミョーな問題のことを、税務の世界では「事実認定の問題」といいます。

 

本来の目的は何なのか?が非常に大事です。

ビジネス上の目的ならば、もちろん堂々と交際費として経費に計上すればよいですが

お友達との楽しい旅行というだけならば、もちろん経費ではない。

 

お友達との旅行でないですよ、という可視的な証拠を積み重ねる必要があります。

双方に聞き取りをして(税務調査には反面調査というものがあります)、

ハナシを聞くだけではなく(口裏を合わせることはいくらでもできますので)、

打合せ記録などの記録をつけていくことが重要です。

 

これが出来ないのであれば、経費には出来ません。

 

経費にできる、できない問題

個人事業主のかたからは毎年のように、

経費に出来るか、出来ないか、を確認されることがあります。

 

個人事業主のかたの経理は

ビジネスの費用とプライベートの支出の区別が非常に重要です。

というか、これにつきます。

 

経費に出来るか、出来ないか、という質問の裏側には

経費ではないと思うけど、

というワードが必ず頭についています。

口に出して言葉にしていなくても、そう思っていることが大半です。

 

「経費かどうか」は、合理的なルールでもって判断していけばよいですが、

経費ではないと思っているものを経費にすることは利益を減らす、立派な脱税行為です。

 

経費かどうかで悩むならまだしも

経費に出来るかどうかは悩んではいけません。

そう考えた時点で、経費ではないので。

 

法人も個人事業主も、基本的には税金を払わなければ

手元にお金が残りませんので、過度な節税は考え物だといつもお伝えはするのですが。。。

 

経費とくに、プライベートとの境目が曖昧なモノは、

ご自身でキッチリと無理のないルールを決めて、証拠を残せないのであれば

経費にしないことをオススメします。

 

特に、税理士に経理を丸投げしているひとで

ウチは旅行は全部経費にしてもらってるよ、って堂々とのたまうひと、たまにいますが、

本当に経費になってますか?ってツッコミたくなります。

 

税理士事務所の事務員や、税理士は、経費として説明できないと判断すると

法人であれば役員貸付金として

個人事業主であれば事業主貸として

経理処理することに慣れていますし、ヒドイ場合は確認すらしない場合もあります。

 

ご本人は領収書を全部提出して

経費になったつもりでしょうが、実際には経費ではなく

事業資金を役員が使い込んだ、貸した、状態であることは結構多いです。

 

法人であれば決算書をみれば一発で分かりますし、

税務調査で総勘定元帳を全部洗われたらすぐにバレます。

 

まとめ

フリーランスの経費はほんとうにご相談が多いことの一つです。

また、個人事業主の節税って経費を適切に処理することが

一番だったりするのですが。

経費の計上ルールこそ税理士に相談すべきことですので、

うまく税理士に相談してください。

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この記事を書いた人

ひとり税理士として独立開業した京都在住の税理士です。ひとり税理士としてチャレンジしていること、考えていることなどを発信していきます。

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