私の事務所では漫画家や同人作家の方に法人化を勧めていないこともあり、確定申告業務としては多い方だと思います。
ほぼ一人でやっているのですが、事業所得だけで15件以上ありますし、譲渡所得も時にはあります。一般的に税理士事務所だと確定申告業務が嫌がられることが結構多い印象です。
実際私も勤めているときはあまり確定申告業務が好きではありませんでした。確定申告に関して税理士事務所で嫌がられる理由について少し考えてみたいと思います。
税理士事務所での確定申告業務の位置づけ
一般的な税理士事務所や税理士法人で中規模のところの場合について考えてみます。
確定申告業務の位置づけとしては、通常業務に加えて業務が増える要因となりがちです。確定申告についてそれをメインに考えている事務所は今でも少ないと思います。
法人メインや資産税メインのところはありますが、個人事業主の業務がメインになっている税理士事務所や税理士法人はほとんど聞きません。
一人で税理士業をしている、もしくは少人数のスタッフを抱えて税理士が一人でという場合には、確定申告業務を行っているケースもあると思います。
ただ法人メインや資産税メインだと、基本的にはその通常の業務に上乗せされる業務であって、あまり喜ばしいという感じもないようです。
私が勤めている時には資産税部門でしたが、相続に関する譲渡案件はほとんど全て担当していましたので、譲渡申告だけで10件以上を担当している年もありました。
そういうことになると、ただ残業が増えるだけ、確定申告手当もなしみたいなケースも今でも見かけるので、あまりやりたくないというのが本音になるでしょう。
所長先生が「確定申告の仕事を取ってきたぞ」と言っても、誰も手を挙げないみたいなのは税理士事務所あるあるのような気がします。
また、税理士事務所にとって個人事業主の方はメインになりづらいというのは、報酬をいただきづらいという部分もあるのかなと。
個人事業主でも所得が高い業種、例えば医業であったりクリニックであったり、そういうところであれば報酬も比較的高く設定しやすいです。
一般的なフリーランスとかになると、よくて1000万円ぐらいの売上のところがあるでしょうし、それ以下というのもある意味でボリュームゾーンでいうとその辺りになる可能性は非常に高いと思います。
ですので、報酬として、法人税の申告、中小企業相手に税務のアドバイスをしたり、資産税で相続税申告や相続税対策をしたり、不動産や保険のアドバイスをする方が報酬としては高く見込めるケースは実際のところはあると思います。
また確定申告業務には結構な幅があり、不動産所得で何棟も持っているケースもあれば、一室だけとか駐車場を5台分だけみたいなケースもあるでしょう。顧問先の社長や取締役、役員の申告を同時に受け負っているケースもそれなりにあると思います。
そういったスモールな確定申告業務だと、基本的には報酬を高く設定できないので、採算が合わないということもある可能性が高いです。
いわゆるスポット業務としての捉え方をしていると、採算についてはかなりシビアになるでしょうし、通常業務を圧迫するお荷物業務として見られている可能性はなきにしもあらずです。
そういったふうに業務を捉えてしまうのは、私は仕方ないと思いますし、それぞれの事務所の戦略があっていいと思います。
私も勤めているときは、少し前に書いたように、譲渡所得の申告が相続税の申告の通常業務に上乗せになるということの辛さを実感していました。
なおかつ私の事務所では、そうした譲渡所得の申告を担当しても、手当が増えるわけでもなく、ただただ業務量が増えて残業が増えるというだけでした。
確定申告業務を他の部分も含めて一生懸命やっても評価の対象にはならなかったというのは、私が納得できなかった理由の一つでもあります。
ただ、やはりそれがスポット業務である限りは、そういう捉え方をしても仕方がないような気もしています。
私の事務所では確定申告業務はスポット業務ではなく顧問業務に切り替えるようにして今も対応しています。
私の事務所の今の対応状況
私の事務所の今の状況をお伝えしておくと、独立後7年目が終わろうとしています。
当初は確定申告業務をスポット的に捉えていたのですが、今はスポット業務ではなく顧問業務に切り替えるということを推進しています。
お客様のご依頼自体はものすごく多いわけではないのですが、徐々に増えていますし、自分一人+アルバイトで事務所を運営していく分には十分な件数になってきつつあります。
私が勤めている時に確定申告業務でこれはしんどいなと思ったのは、譲渡所得ともう一つ、年一で資料をドサッと預かって処理していくという作業でした。
これはスポット的に業務を捉えているから発生することなのですが、確定申告の際には、割と普通に年が明けてから1年分の資料をドサッと預かるみたいなことが頻繁に起こっていたように思います。
法人だと規模によっては多少あるかもしれません。普通に顧問業務をして毎月試算表を出すみたいなかかわり方が多いです。
確定申告業務の場合は試算表を必要としていない人が多いというイメージもありますが、毎月資料を預かってということをしないというケースもやはりあるのです。
むしろその方がメインと言ってもいいかもしれません。それがたくさん出てくると、やはり続けるのは難しくなっていくと思いますし、モチベーションも上がらないと思います。
私は年一で資料を大量に預かるのが嫌だったので、ある程度の規模で記帳代行を含めてという場合には顧問でお願いするようにしています。
それが受け入れられないのであれば業務として受けないというのも私の事務所の方針ではあるので、あまり気にしないようにしています。
お客様のご協力があってこそではあるのですが、やはり私もその人の仕事だけをすればいい状況ではなく、他の業務もたくさんありますので、年一の繁忙業務を年間に慣らすという意味で顧問のお願いをしています。
そうして増えてきたお客様は今までで10件を超えていますし、毎月資料の共有をお願いして、共有していただいたものを処理していく、ご質問があれば答える形です。
特に試算表についてはご要望がないケースも多いですが、それでもお客様からは継続してご依頼いただけることが多いので、満足していただけているように思います。年明け1月から3月15日までの業務量を年間に慣らすようなイメージです。
これをしておくだけでも随分と印象としては変わってくるのではないかなと思います。
スポット業務として確定申告業務を捉え、年一を受け続けている限りは、1月から3月15日までの忙しさはどんどん増していくばかりです。
私も今の事業所得の顧問先、個人事業主の方の顧問先が全部年一になってしまうとかなりしんどくなるでしょうし、半分もできないかもしれません。
また、普段からお客様からご相談やチャットでの質問、メールでの質問については無制限に行っていただいていいというふうにお伝えしています。
ですので、お客様にとっても相談したいときに相談すればいいということで、ありがたく感じてもらっている面もあるでしょう。
私としては顧問業務の方が最優先になりますので、優先対応していただきたいのであれば、顧問契約をというのはご案内としてはご理解していただきやすいです。
まとめ
確定申告業務は多くの税理士事務所で敬遠されがちですが、その主な理由は「通常業務への上乗せ」「報酬設定の難しさ」「年一での資料処理の負担」といった点にあります。
しかし、発想を転換して、スポット業務から顧問業務へと切り替えることで、これらの問題は大きく改善できます。
毎月の資料共有と処理、いつでも相談できる体制を整えることで、繁忙期の業務集中を年間に平準化でき、お客様との継続的な関係も構築できます。

