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税理士になってから、本の読み方や手に取る本が変わってきた

最近、税務の本よりも『絵画の歴史』を読んでいる時間の方が、いい仕事ができている気がする。

税理士試験の勉強をしていたころ、読む本はほぼ決まっていた。教科書、問題集、法令集。それ以外を手に取る余裕はなかったし、そもそも「他の本を読む」という発想すら薄れていたように思う。

科目によっては何年もかけて合格を目指すわけで、その期間は当然ながら「読みたい本を読む」という感覚が遠ざかる。本屋に行っても、ふと気になる文庫本を手に取りながら「今は違う」と棚に戻す——そういう繰り返しだった。

試験が終わってはじめて、読書が「戻ってきた」という感じがした。積んでいた本を読み始めたとき、ただページをめくる行為がこんなに気楽なものだったか、と少し驚いたのを覚えている。

ただ、勤務時代の読書は実務書や税務雑誌が中心になっていた。仕事に役立てるための読書、という方向性が自然と定まっていた。「インプットして使う」という目的が明確で、それはそれで充実していたけれど、どこかで本を道具として見るクセがついていたかもしれない。

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独立してから、本の選び方が変わった

独立すると、「自分で判断する場面」が一気に増える。誰かに確認を求めることはできても、最終的に決めるのは自分だ。そのプレッシャーは、勤務時代とは質が違う。

しばらくして気づいたのは、税務の本だけ読んでいても、判断の質がなかなか上がらないということだった。正確な知識は必要だが、それだけでは足りない何かがある。どう伝えるか、どう優先順位をつけるか、何を大切にするか——そういった判断の土台は、税務の文献からは得にくかった。

それで自然と、経営・マーケティング・心理・哲学といった、税務と直接関係しない本を読むようになった。

最初は「これが仕事に活かせるか」を考えながら読んでいたが、あるときからそれをやめた。仕事に役立つかどうかを考えなくなった時期の方が、むしろ視野が広がった気がする。

役に立つかを先に判断しようとすると、無意識に「すでに知っていること」に近い本しか選ばなくなる。そのフィルターを外したとき、ずいぶん遠いところの本棚まで手が届くようになった。

「考えるための読書」というものがあると気づいた

ある本を読んで「この話、仕事に使えそうだ」と思うこともある。でも最近は、それとは別の読書の役割があると感じている。「自分の思考を動かすための読書」とでも言えばいいか。

哲学や歴史、小説を読むと、普段の仕事の見え方が変わることがある。直接的な知識や手法が増えるわけではない。でも何かがずれる。視点の置き場所が、微妙に動く。

ぼくはこれを視点をストレッチすると表現している。視点が遠くに来たり近くに来たり、伸び縮みすることで同じことでも見え方が違ってくることはある。

以前、老子を読んでいて「足るを知る」という言葉に出会ったとき、すんなり腑に落ちた場面があった。それは仕事のペース配分の話として、自分に届いた。

ぼくは営業経験未経験で独立してお客様の引継ぎもなく、営業にはとても苦労したのだけれど、少しうまく行き始めると仕事の依頼を制限しなくなっていた。

ご依頼をいただけているときはしっかり受けたいという気持ちもあり、顧問契約の解約を想定すると営業をやめるという選択肢もなく、自分の時間を仕事に集中させている感覚もあった。

無理に案件を増やして疲弊するより、今の規模で丁寧にやる方が長続きする——そういう感覚を、その言葉がうまく言語化してくれた気がした。

答えのある問題と向き合うのが仕事の大半だが、答えのない問いもある。そういう問いと付き合うための耐性が、読書を通じて少しずつ育っている気がしている。

育っているかどうか確かめようがないけれど、そう感じることができるだけで十分だと思っている。

なので最近は手に取る本が税務や会計専門の本からは離れてきていてビジネスやマーケティングからも離れてきている。

時代小説や英国ミステリー、絵画の見方や画家の背景に迫るエッセイ集、山登りや写真家、冒険家の本など多岐にわたってきた。

読書とブログ・メルマガのつながり

本を読んでいると「これはブログで書けるかもしれない」と思う瞬間がある。直接引用したいわけではない。読んだことで視点が動いて、そこから自分の言葉が出てくるような感じ。

メルマガを毎日配信し続けられているのは、インプットの習慣があるからかもしれない。正確にはわからないけれど、何かを読んでいない日が続くと、書くことへの手がかりが減る感じがある。

アウトプットに詰まったとき、最近は「インプットが足りていないサインかもしれない」と考えるようにしている。

無理に絞り出すより、何か読んだ方が早い。それが記事のテーマに直結しなくても、頭が動き始める感覚がある。インプットとアウトプットは、水路でつながっている感じがする。

読み物という点では本ではなくwebメディアの記事もよいと思うし、ぼくも実際によく見ている。

今の自分の読書スタイル

正直に書くと、今はそれほど計画的に読んでいない。ランニング中や移動中に読むことが多く、Kindleのありがたさをよく感じる。寝る前に少し読んで、眠くなったらそのまま閉じる。そういうペースだ。

「仕事に役立つかどうか」をほぼ考えなくなった今の読書が、一番楽しい。税法の本も読むが、それは必要だから読む。それ以外は、気になった方向へ手を伸ばす。

読書と仕事と書くことが、ゆるやかに絡まっている。そのことを、最近はあまり整理しようとしなくなった。あれこれと考えすぎている気もするので流れに身を任せてみようと思っている。

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この記事を書いた人

ひとり税理士として独立開業した京都在住の税理士です。ひとり税理士としてチャレンジしていること、考えていることなどを発信していきます。

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