私は独立してしばらくしてから「法人単発決算」というサービスを提供しています。簡単に言うと、顧問契約ではなく、決算の時期に会計データをお預かりして、その時だけ決算を仕上げて申告するという流れです。
基本的には決算の前に打ち合わせ等はなく、お客様ご自身で入力をしていただく形になっています。そういったサービスを提供している理由について少しお話ししてみます。
単発決算という仕事の良し悪し
単発決算というと、あまり良いイメージを持っていない税理士も多いと思います。私も独立するまではそういったサービス提供の仕方をしたことがなかったので、どうなるかなと思っていたのですが、現状今のところ私の場合、年に5〜6件は単発決算の仕事があります。
単発決算の仕事をするにあたって気をつけていることとしては、会計データをこちらで基本的には入力しないというルールにしていることです。決算にあたって修正等は必要なこともちろんあるのですが、それとは別に日々の入力等はやらないという代わりに、顧問になっている顧問ではなく決算だけやるという形にしています。
そのため日々の入力からは解放されているので、決算のお客様の入力を毎月やるということはないです。それをお客様自身もご理解いただいた上で取り組んでいますし、もう一つの条件として従業員がいないことなども条件として設けています。
なぜかというと、やはり給与の仕訳というのは会計に慣れている方でもミスが目立つ部分であり、役員報酬だと基本的には毎月の処理としては変わらない部分の方が大きいからです。そう考えると役員報酬だけだと仕訳の難易度としては下がると思います。
ただ、毎年ご依頼をいただくこともあればいただかないこともあり、見通しが立てづらいというのも課題としてはあります。ご依頼いただけると確かにありがたいことではあるのですが、お客様によっては入力できていたと思っていても、こちらが見ると全然できていないということも実際のところあるので、そのギャップをいかに縮めるかというのが課題の一つかなと思います。
単発決算という仕事をする理由
私としては顧問業があるので、ある程度件数も増えてきていますし、単発決算をやらないといけない理由は収入面以外で言うとあまりないように見えるかもしれません。実際のところ、単発決算がなくても収入としては確保できているので、無理して受ける必要はない状態です。
ただ私がそれをしているのは、私のトレーニングにもなるからという部分があります。例えば法人の決算を私自身は今件数があまり多くない状況(個人事業主の顧問の方が多い)ですが、お客様それぞれから決算のご依頼をいただくと会計ソフトなどもそれぞれ違うわけで、どういったことを入力しているのかというのも違います。
そういったお客様ごとの違いを経験できるというのは、この仕事をしていると割と大きいように感じているので、単発決算の仕事は私自身のトレーニングも兼ねてという部分もあるのですが、サービス提供の一つとしてやっています。
もちろんある程度価格設定についてもご理解いただく必要があるのですが、税理士が顧問に入るほどでもないけれども、利益が出ているし、決算だけはやってもらいたいというニーズは確かにあると思います。
実際私でも5〜6件は年間法人の単発決算を担当させてもらっているので、営業すればもっと受注していける可能性はあります。私はニーズがある仕事であればやればいいと思っているタイプですので、単発決算についてもそれほど抵抗はないです。
ただお客様と入力の状態のギャップがあまり大きいと、こちらの手間がものすごくかかってしまうことになるため、事前に可能であれば入力した内容を確認させてもらうようにしています。特に初めての場合はそういったことをご案内してご了解いただいてから面談をして契約という形をしています。
毎年ご依頼いただいている方もいらっしゃいますので、そういった方については事前の会計データの内容確認等はやっていません。
この辺りは自分がどういうところで線引きをしたいかということに関わってきますし、独立しているとその辺りの線引きの仕方、どこに線を引くのか、どういったサービスを提供するのかも自分次第ですので、試行錯誤してやってみてもらうといいのかなと思います。
まとめ
法人単発決算サービスは、顧問契約を結ばずに決算時のみ対応するサービスです。このサービスの特徴と運営のポイントは以下の通りです:
サービスの特徴
- 顧問契約なし:決算時期のみの対応
- お客様による自己入力:日々の会計入力はお客様が担当
- 条件設定:従業員がいない法人に限定
メリット
- 税理士側:多様な会計ソフトや業務パターンの経験が積める(トレーニング効果)
- お客様側:顧問料を支払わずに決算業務を依頼できる
課題と対策
- 収入の不安定性:毎年の依頼が確約されない
- 入力品質のギャップ:事前確認や条件設定で対応
- 初回は特に慎重に:事前の会計データ確認を実施