「税理士の仕事、好きですか?」と聞かれて一瞬詰まった
確か、懇親会の席だったと思います。税理士や税理士を目指している人たちが集まる場で、隣に座った方から「税理士の仕事、好きですか?」とさらりと聞かれました。
「嫌いではないですよ」とか「向いてはいると思います」という言葉はすぐ出てくるのに、「好き」という言葉だけがなかなか出てこない。変な間を作ってしまったことが気になって、その後も少しずっと頭に残っていました。
この詰まりは何なんだろうと。改めて自分に問いかけてみようと思ったのが、この記事を書くきっかけです。
答えは出ているような気もするし、まだ出ていないような気もします。ただ今の自分なりに整理してみようと思います。
勤務時代に感じていたこと
税理士事務所に勤めていた頃、「仕事が好きかどうか」を考えることはほとんどありませんでした。今思うと、だいぶ思考停止していたと思います。
それよりも「求められた処理をちゃんとこなすこと」が当面のテーマで、好きかどうかは正直あまり関係がなかった気がします。特に税理士登録してからもそんな状態でした。
雇う側からするといいかもしれませんが、受動的というか自発的な部分は仕事においては少なかったと思います
相続税の申告書を正確に、ミスなく、できるだけ多く仕上げることを求められていました。それ自体は悪いことではないのですが、「自分がやりたいこと」と「求められること」のズレを感じていた部分が、やはりあったと思います。
ただ、しんどかったかというとそうでもなく、「そういうものか」という感覚で受け入れていた部分もあります。
仕事はこういうものだ、組織とはそういうものだ、と。「好きかどうか」を問うことすらしていなかったのかもしれません。
独立してから「好き」の中身が変わってきた
独立すると、仕事の全部が自分の選択になります。これは思っていた以上に大きい変化でした。お客様を選べる、進め方を決められる、断ることもできる。
その結果として起きた変化として、「この人の役に立てた」という実感が直接返ってくるようになりました。
勤務していた頃は、誰かを経由して届くような感じだったものが、独立してからは顔が見えるというか、自分とお客様の間に余計なものがない感じがします。
そうなって気づいたのが、「数字を合わせること」が好きなのではなく、「人の話を聞いて整理すること」が好きなんだということです。
税理士という仕事よりも「相談を受けて一緒に考える仕事」が自分に合っているのかもしれない、とそのあたりから思うようになってきました。
しんどいと感じる場面も正直に書く
「好きな仕事だからしんどくない」というのは、正直に言うと嘘です。
繁忙期に判断が連続する時期はやはり消耗します。難しい相続案件や感情が絡む相談を受けると、重さがあります。
「答えが出ない」相談を抱えたまま寝る夜というのも、ときどきあります。税務的な答えは出せても、その方の状況に対してどこまで何ができるか、という問いはすっきりと解消されるものではないので。
それでも続けてこられた理由を考えると、結局「人と関わること自体が好き」というところに行き着きます。
しんどさの原因が「人と関わること」でもあるし、続けられる理由も「人と関わること」であるというのが面白いところで、それが向いているということなのかもしれないとは感じています。
「好きだから続けている」ではなく「続けているうちに好きになった」
最初から「税理士が大好きで選んだ」わけではありませんでした。資格を取ること自体は目標でしたが、税理士という仕事への強い愛着があったかというと、そうとも言い切れない。
続けること、深めること、自分なりのスタイルを少しずつ作ること—そういうことを重ねていくうちに「好き」が育ってきた感覚があります。
「好きなことを仕事にする」という言葉をよく聞きますが、順番は逆でもいいんじゃないかと思っています。続けていくうちに好きになる、というパターンも全然あると思うので。
受験中の方や転職を考えている方に伝えたいのは、「今すごく好きじゃなくても大丈夫」ということです。今の時点で好きかどうかより、やっていくうちに合っているかどうかが分かってくることの方が多いと思っています。
で、結局「好き」なのか
今の自分なりの答えとしては、「好き」だと思います。ただし、最初から好きだったわけじゃないし、いつでも好きかというとそうでもない。
一つ正直に書いておくと、独立してから2〜3年目くらいまでは、営業がうまくいかずかなりしんどかったです。そのころ同じ問いをされたら、「好き」とは言えなかったかもしれない。
今こう書けているのは、今がうまくいっているからバイアスがかかっているだけかもしれない、という可能性はゼロではないと思っています。
それでも今の自分の感覚としては本当にそう感じているので書きますが、「好きかどうか」より「自分に合っているかどうか」の方が大事かもしれないという気もしています。
好きだと感じる瞬間は確かにあるけれど、それよりも「この仕事が自分の性格や関わり方に合っている」という実感の方が、続けていく上では安定した土台になっている気がします。
数年後にまた同じ問いをされて、また一瞬詰まるかもしれません。逆に、すぐ「好きです」と言えるようになっているかもしれない。どちらでも構わないかなと今は思っています。
問い続けること自体が、この仕事をちゃんとやっている証拠だと、そう思うようにしています。
