相続税計算上の債務控除。お墓とお仏壇関係

ビーチ

※Photo by Michael Haslim on Unsplash

おはようございます、相続税申告をメインに担当している所属税理士ブロガーのtakasago(@co_develop)です。

昨日は母の日でしたね。

ぼく自身は祖母(通称ビッグマザー)のお墓参りに行ってきました。

お墓やお仏壇関係は相続税計算上で債務控除できるもの、できないもの、

明確に決められていますので、整理しておきます。

 

目次

債務控除できるもの

債務控除できるものとして、代表的な区分で整理すると

  • 葬式または葬送にかかる費用
  • お布施・読経料・戒名料
  • 火葬・埋葬・納骨費用
  • 遺骸または遺体の回送費用
  • 死体(遺骨)の捜索費用、運搬費用

このように限定列挙(葬式費用として控除できるものが特定)されています。

 

この中でも、亡くなった方の職業や財産など社会通念上相当な金額とされています。

宗教などにもよりますし、かかる費用もことなりますが、

いわゆる本葬までにかかった費用は控除できると覚えておきましょう。

 

かかった費用については可能な限り領収書・明細書・レシートなどを

残しておいて、控除できるように根拠を残しておきます。

 

仏教での葬儀の場合、いわゆるお寺さんへのお布施や戒名料、お車代については

領収書がでないことがほとんどです。

この場合は、メモ程度で構わないので、日付・金額・お寺の名前を

保存しておいてください。

 

実務的にはお布施等について領収書がないと債務控除として認めないというのは

聞いたことがありません。

(所得税や消費税の取り扱いとは異なりますのでご注意を)

 

お寺さん=宗教法人にとっては本業、いわゆる非課税で税金がかからないので

あまり深く追及されることもないです。

宗教法人の会計・税務は特殊です。

 

無理して領収書をもらわなくてもよいので、記録は付けておきましょう。

 

ほかにはお通夜・本葬での飲食の費用、お供え物、

その他、葬儀を執り行うのに必要な費用についても控除できるので

あわせて書類を残しておきましょう。

 

債務控除できないもの

一方、債務控除できない葬儀関係費用についても限定列挙されています。

  • 香典返しのためにかかった費用
  • 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
  • 初七日や法事などのためにかかった費用

となっています。

 

香典返しのためにかかった費用ですが、

もともとは香典は贈与税が非課税です。

 

香典=もらった金銭が非課税なのに

お返しにかかった費用を債務控除出来たら整合性取れないよね、

っていうことで香典返しにかかった費用は債務控除できません。

 

墓碑や墓地にかかった費用については、

亡くなった時点で墓碑や墓地を所有していた場合に

これらについては相続税が非課税だからです。

 

これも香典返しと同じ理屈で

墓碑や墓地が非課税財産なので、それにかかる費用を控除したら

これまた整合性がとれないよねってことが理由です。

 

初七日や法事のためにかかった費用については

宗派による違いが大きすぎるのと、

どこまで計上するかで金額が大きく異なるからです。

 

初七日や四十九日は仏教での法事ですが

キリスト教や神道では、その法事の頻度が異なります。

お通夜・本葬まではいいけど、そのあとの法事は控除できません。

 

[alert title=”注意”]最近では初七日も本葬と同時に行われることが多くなっています。

その場合、本葬と初七日で費用が区別できなければ葬式費用に含めて

債務控除できるというのが実務的な取り扱いです。[/alert]

 

仏教での法事を考えると回忌というものがあります。

三回忌とか17回忌とかですね。

もし仮に法事にかかった費用が控除できるとなると、

この17回忌とか23回忌の分まで控除できることになり、

相続税の申告書が永遠に終わらない。。。

ということも想定できるわけです。

 

そもそも葬儀費用については、

相続税の債務控除の観点では、亡くなった人が払うべき債務ではありません。

 

相続税計算上の債務控除の基本的な考え方は

亡くなった人が亡くなった時点で払うべきもので、払えていなかったもの

となります。

 

葬式費用については、亡くなった時点で金額も確定していませんし

亡くなった人の費用負担ではないので、債務という意味では控除できませんが

社会通念上、そりゃあんまりなんじゃない?ということで

葬儀に関する費用についても債務控除できることになっています。

 

[alert title=”注意”]亡くなった時点で未払いものなら墓地や仏壇の購入費用は

債務控除できると思いがちですが、これについては債務控除不可です。

理由は前述と同じく、墓地=非課税、だからです。[/alert]

 

お墓や仏壇の考え方も多様化してきた

日本は核家族化・高齢化が進んできたこともあり、

お墓や仏壇の考え方も多様化してきました。

 

ぼくのお客様でも、

お墓はいらないから、散骨してくれっていう方が

少しづつですが増えてきました。

 

お墓に入れてもらうと

子ども達が維持管理が大変だから、というのが最も多い理由です。

 

良く耳にするのが

細かく砕いて粉末状にし、海にまく散骨や

樹木の下に埋めてもらう樹木葬、

あとは特殊な技術を使って遺骨をメモリアルダイヤモンドにして

ジュエリーとして身に着けたり

というサービスもあるようです。

 

コレだけ多様化すると、

迷ってしまいそうですが、

遺族の方が一番喜ぶのは何かわかるでしょうか?

 

それは、遺言などで

お墓や遺骨をどのようにして欲しいか明確にしておくことです。

 

残された遺族でこれらを決めることはハッキリ言って

結構難しい部分があります。

 

お元気なうちに、ご自身の意思・希望を明確にし

家族に伝わるようにしておくと

遺族はその通りにすればよいだけですから

迷うこともありません。

 

口頭ではなく、文章にしておいたほうが

より明確に意図が伝わりますし、記憶違いで誤解が生まれたりもありません。

 

まとめ

今日は久しぶりに!相続税のことについてお伝えしました。

相続税について、ほかの税務と決定的に違うところは

答えが決まっていない、ということです。

 

法人税や所得税については、税金が最も少なくなる

適切な申告がゴールであり目標です。

 

でも相続は違います。

ご家族の希望で税金が高くても、この分割がいい、

というハナシはそれこそ山ほどあります。

税金が安い申告=最善の選択肢、ではないということです。

 

それゆえ、お客様のハナシを丁寧に聞き

オーダーメードの対応が求められる業務になります。

 

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この記事を書いた人

ひとり税理士として独立開業した京都在住の税理士です。ひとり税理士としてチャレンジしていること、考えていることなどを発信していきます。

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