相続の世界では、財産が分けれていないことを未分割の状態といいます。
未分割の状態が引き起こす問題は、影響が大きいです。
相続税計算上の特例が受けれない問題
相続税の計算上、様々な特例がありますが、
その特例の多くについて適用を受けようとするための条件(=適用要件といいます)には、
財産の分割が決まっていることが適用要件として設定されています。
当然のことながら、未分割の状態ではこの特例を受けることができませんので
必然的に相続税は高くなってしまいます。
さらに、基本的に法定相続分で相続税を計算します。
未分割で申告しても、後々に分割できる見込みがありますという届け出を
申告書と一緒に提出しておくと、分割できたときに申告しなおす際、
特例を受けることが出来ます。
その際には、当初支払っていた分割前の相続税は、
分割後の特例を受けて計算した相続税より高くなってしまいます
(最初の申告の相続税>分割後の申告の相続税)ので
税額を返してもらう処理が必要になります。
この税額を返してもらう処理を更正の請求といいますが、
更正の請求をすると税務調査の可能性が高くなります。
なぜか。
それは、税務署は一度受け取った税金を返すことが嫌だからです。
(これは税務署に限らず誰でもそうですが)
返す前にきっちり中身を見ようではないか、という心理が働きますので、
税務調査しようという流れが生まれてしまいます。
税務調査に対するイメージでいいものはありません。
相続人間で揉め事が解消して分け方が決まった後、
さらに税務署からの追及があると思うと、精神的なダメージが大きいです。
財産が塩漬けになる問題
未分割の状態はすなわち、財産が塩漬けになります。
預金であれば凍結されて解約したり、動かせたりしません。
不動産についても登記などは現実問題難しく、
賃貸に出したり、売却したりの処理は難しくなります。
さらには、財産が塩漬けになるということは、
前述の特例適用前の高い税金を、相続人が自身の財産から払う必要があります。
亡くなった人の財産で相続税を払うことが出来ませんので、
相続人の持ち出しになってしまいます。
税額が僅少であればよいですが、
高額になってくると納税のために、財産を処分する必要が出てくる可能性が高まります。
例えば、老後のための蓄えや学資保険を解約するとなると
ライフプランは一気に崩壊します。
長年かけて積み重ねてきたものが、相続で財産が分けれないことで崩れてしまいます。
弁護士案件になることの問題
税理士は、財産の分け方について介入することは出来ません。
分け方の結果で税金を計算することは出来ますが、
相続人間の利害を調整して、分割をまとめることは出来ないのです。
これは弁護士さんの職域になります。
弁護士さんに頼んで分割をまとめたり、裁判所での調停に行ってもらい
主張をしてきてもらいます。
この弁護士費用は、高額になることが多いです。
揉め事の仲裁にはお金がかかってしまうのです。
もちろんこの費用も未分割の状態では相続人の持ち出しになります。
調停や裁判が長引けば長引くほど、費用もかかりますし、
精神的なストレスが非常に強くなります。
財産を分けることに疲れてしまうんですね。
まとめ
相続でもめることを称して「争族」と書いたりします。
出来るだけもめ事がないことが望ましいですが、
財産を持っている人が亡くなってしまってからでは遅いです。
もめ事をなくそうと思うと生前対策が有効です。
リスクをコントロールし、相続人が安心できる道筋をつけることが肝心です。
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