おはようございます、京都の所属税理士takasagoです。
突然ですが、みなさん。相続税対策と相続対策の違い、ご存知ですか?
「税」が入っているかどうか、と簡単に思っていると、
ハナシがごちゃごちゃになるので違いを整理しておきましょう。
相続税対策
相続「税」対策となっているので、お分かりかもしれませんが、
もちろん税金対策です。
相続の世界では、税金よりもご本人の納得、
ご家族の納得や理解が優先されます。
これは法人税や所得税とは、異なる大きな特徴です。
税金がかかってもよいから、この分け方をしたい、相続させたい、
というご要望は皆さんが思うよりも多いのです。
でも、分け方が決まれば、税金に対してできることが
必然的に決まってきます。
例えば贈与であったり、保険に入ったり、イロイロですね。
分け方が決まれば、税金がおのずと決まりますので
じゃあ、どうやって税金を減らそうか、節税できそうか、
考えていくことになります。
税金のことについてはもちろん税理士の出番です。
贈与税をうまく利用したり、生命保険の非課税を有効にしたり、
非上場株株式の価額を下げて贈与したり、
所有している土地の上に賃貸建物を建てたり。
でも勘違いしてはいけないのが
この相続税対策=税金対策を、財産の分け方が決まる前に行ってしまうことです。
分け方を決める前に財産を贈与したり、節税対策に走ったりしてしまうと
揉め事のタネをまいているようなものです。
例を挙げて考えてみましょう。
相続人は子ども2人とします。
財産を遺すひとが財産の分け方を決める前に
片方の子や孫にだけ財産を贈与してしまっていたとします。
[memo title=”MEMO”]そんなことないでしょ、と思うかもしれませんが
相続はいざフタをあけてみると、
お互いの子どもが知らないうちに贈与してたりします。
別に贈与したことを報告する義務はないですし。
平等にとは思っていても、身近にいる孫のほうが可愛かったりします。
平等にしていたつもりでも、差が出来ていたりします。
ある種、数字というのは残酷です。
客観的でもあり、数字の意味はこと贈与に限っては
後から読み取ることができません。書いていれば別ですが。[/memo]
そうなると、分け方が決まっていないわけですから
遺産分割協議という、財産を受け取れるひと同士で
何をいくら相続するか決める、会議をする必要があります。
問題は贈与の額が双方で異なる場合。
贈与の財産を足し戻して考えるのか、考えないのか。
足し戻しの対象は孫の学費も含めるのか。
亡くなったひとが生前に片方にのみ言っていたことを信用するのか。
亡くなったひとの生前のお世話や介護を誰が担ったのか。
またそれに報いることを財産の分配に反映するのか。
挙げ始めるとキリがなくなります。
ここに相続人以外の人、前述の例で言えば相続人の配偶者がでてきて
さらには片方の孫を養子にしていたりしたらもう大変です。
ハナシはもっとややこしくなります。
財産の分け方を決める前に、相続税対策と称して財産を分配すると、
財産と一緒に揉め事も分配することになりかねません。
税金を考える前に考えることがあります。
それが財産の分け方であり、相続対策です。
揉めたくなければ順番を間違えないことです。
相続対策
では、相続対策とは何ぞやというと。
相続対策での大きな目的は揉めない相続にすることです。
最近、「争族」(そうぞく)という言葉をよくメディアで目にします。
争う族と書いて、「争族」。
要は、家族で争う相続です。
相続がもめるのは、圧倒的に「分け方」です。
分け方を規定するのは民法です。
民法で分け方を決めて、相続税法で税金の計算を規定しています。
簡単に言うと、民法では、誰が相続人で、どれくらいの割合で相続できるのか、
要は分け方を規定しているのです。
分け方がスムーズに決まっていれば揉める可能性はグッと少なくなります。
相続対策で行うことは
揉めないように分け方を決めること、
これにつきます。
相続対策では、
分け方をどのようにするのか、
遺言は書くのか、
書くとしても自筆なのか公正証書なのか、
遺留分対策も念頭に入れるのか、
遺言を書かないのであればどのように相続人に自分の意思を伝えるのか、
祭祀承継(お墓や法事を引き継ぐ)は誰がするのか
お墓はどうするのか
不動産は共有にして換価分割するのか
などなど、ご家族と財産と財産を遺す人の考えを考慮する必要があります。
相続対策は家族の数だけありますし
相続対策にオーダーメードが必要な理由もわかっていただけるかと。
ぼくは数々の相続を目にしてきて、申告書も書いてきましたが
遺言があって、その遺言での財産の分け方を相続人にキチンと説明して
相続人が納得している相続では揉めているのを見たことがありません。
相続は事前準備がすべてです。
相続対策をしてから相続税対策をするべきです。
また、相続対策で税理士が負う責任は非常に大きいものがあります。
それは相続税が全体からスタートして、財産の分け方で税金が大きく異なるコトが
往々にしてあるからです。
相続人の状況によってはこの特例が使える、または使えない、
使えたら税金はこのくらい、使えなかったらこのくらい、
またこの分け方で税金が払えるのかどうか、
そういったこともすべて相続対策でシミュレーションしていきます。
そのうえで、財産の分け方についてご相談があれば
相談者の意思をくみ取り、かつ、この分け方をすればこうなります、
という判断の材料を提示することが大切です。
まとめ
相続対策と相続税対策はその趣旨が全く異なります。
分け方の対策=相続対策、税金の対策=相続税対策、と考えていただき、
相続対策→相続税対策と順番を守って揉めない相続をサポートしていきます。