もめていても相続税の申告は必要です。

戦い

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おはようございます、京都の所属税理士takasagoです。

相続税の申告と聞くと、イロイロな噂話を皆さん耳にされるようです。

税理士としていろんなご質問を受ける日々ですが、特にもめているときの相続税申告については、皆さんあまり経験がないようで、誤解があるようなので解説します。

 

目次

もめていれば申告不要?

もめていれば申告しようがないじゃないか、だから申告不要でしょ?と言われることがあります。

結論を言うと、もめていても、もめていなくても課税価格(ザックリいうとプラスの財産からマイナスの財産を引いた金額)が基礎控除額を超えていれば申告が必要です。

 

基礎控除額とは3,000万円+600万円×法定相続人の数、で計算します。

法定相続人とは民法で定められた、本来財産がもらえる人とイメージしてください。

 

もめごとには大体3パターンありまして、ひとつが財産の分け方でもめる場合、もうひとつが財産の総額でもめる場合、両方がミックスの場合です。

 

財産の分け方でもめるとは、すなわち財産の取り分でもめるということです。

それぞれのご家庭の事情もあるでしょうし、家族間のパワーバランスもあります。

遺留分に配慮された遺言があれば解決することもありますが、遺言があってかえってもめた、というケースもあるのでやはり難しいモノです。

 

財産の総額でもめるとは、亡くなった方の財産がいくらだったのか、ということでもめるということ。

そんなことあるの?って思うかもしません。確かに相続税の計算というのは、亡くなった方の亡くなった日現在の財産額で計算します。

でも相続の世界では持ち戻し・特別受益という考え方がありまして、簡単に言うと生前にもらったものを考慮します、というルールです。

[alert title=”注意”]以前は亡くなる前であればどれだけ古い生前の贈与などでも持ち戻しの対象とされていましたが、民法の改正により10年間に限定される予定です。[/alert]

 

両方がミックス、つまり財産総額でもめて、取り分でもめるともはや調停、裁判案件になり、弁護士さんの登場というワケです。

税理士はあくまで税務申告を代理するのが仕事なので、もめごとがあるご家族の間に入って仲裁したり利害を調整するコトができません。

 

税理士法には「公正中立な立場で」と明記されていますし。(こういうときだけ税理士法を持ち出す(笑))

 

もめている状態はすなわち分け方が決まらないのですが、分け方が決まっていようがいまいが、申告書の提出義務・納税の義務は待ってはくれません。

なのでもめているときで分け方が決まらない場合には、「3年以内に分割できる見込みがあります」という届出を申告書と一緒に出しておきます。

 

申告書自体は未分割の状態なので、基本的にすべての財産を法定相続分で按分して申告するコトとなります。

 

未分割の状態だと相続税計算上の各種特例が受けられません。

配偶者の税額軽減や小規模宅地等の課税価格に関する特例など、税額に大きく影響する特例は財産が分けれていることが要件となっていますので、分けれてないと特例が受けられず、結果特例が適用できない状態で申告となり、税額は高くなります。

 

最終的に分けることができて、見込書を提出していれば分け方が確定した段階で特例を適用して申告書を提出しなおすことができます。

相続人それぞれで申告書を提出できる?

もめている場合、他の相続人と一緒に申告書を提出するのがイヤ、というのはよく聞くお話で。

結論から言うと相続人それぞれが税理士に依頼して、それぞれで申告書を提出することができます。

 

というよりも原則は相続人それぞれで、特例としてみんなで一緒に出してもイイよ、なんですね。

 

それではここで質問をひとつ。

相続人それぞれが税理士に依頼したとして、同じ内容の相続税申告書になると思いますか?

 

答えはノーです。

相続税の申告書を作成したことがない人が作った申告書を見ると財産評価からなにから全然違いますし分かります、相続税の申告書に慣れてないなっていうのが。

 

相続人それぞれが税理士に依頼して申告書を作成してもらい提出したとします。

で、その財産総額の記載が異なると税務署はどうするかというと、ほぼ間違いなく財産額の確認をするために税務調査になります。

 

何故かというと亡くなった方の財産額が相続人ごとに異なる(取り分ではなくて総額です)というのは税務申告上あり得ないので、確定させるために調査が必要となるわけです。

もめごとで疲弊しているうえに税務調査が重なると、相続人の方の精神的疲弊は非常に大きくなります。

 

なので、もめていて相続税の申告書を提出する必要がある場合、それぞれの税理士で提出することもできますが、ひとりの税理士が作った申告書にみんなでハンコをついて提出、というのもできるので、もめていても申告書は税理士一人で担当というのもありえますし、ぼくも経験が何度もあります。

 

まあ大概が板挟みになるんですがね(笑)

 

相続人それぞれではなくてみんなで一緒の申告書にハンコをつくということがすなわち分け方で納得しているということではありませんし、相続人それぞれではなくみんなでひとまず同じ内容の申告書を提出するから税務調査がないというわけではないのですが、それぞれで提出すると可能性としては非常に高くなります。

 

もちろんもめごとはないにこしたことはないのですが、もめごとが発生してしまって申告が必要な場合にはどのように申告書を準備するかも結構大切ということをご理解いただければと。

 

まとめ

もめごとにはみんなが巻き込まれたくないものです。

防ごうと思うならばやはり生前対策が重要で、遺言であったり贈与であったりをうまく活用することはもめごとを防止し、少なくする唯一の方法です。

相続がおきてしまってからでは遅いので、お元気なうちに、といつもお伝えするようにしています。

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この記事を書いた人

ひとり税理士として独立開業した京都在住の税理士です。ひとり税理士としてチャレンジしていること、考えていることなどを発信していきます。

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