営業というと、どうやって仕事を増やすか、という話になりがちです。
ただ、独立して8年やってきて思うのは、「何を受けないか」を決めることも、立派な営業なんじゃないか、ということです。
我慢とか、選り好みという話ではありません。事務所を長く続けるためのリスクマネジメントに近い感覚です。
先週は顧問の受付を止めた話を書きましたが、今日はその手前にある、線の引き方の話を書いてみます。
独立したころは、来た仕事を全部受けていた
独立したばかりのころは、業種も規模も選ばず、いただいたご依頼はとにかく受けていました。
選ぶという発想が、そもそもなかったというほうが正確かもしれません。目の前の一件を手放したら、次があるかどうか分からない。その気持ちのほうがずっと強かったからです。
当時はそれで良かったと思っています。いろいろな業種や規模を見せていただいたことは、いまの仕事の土台になっていますし、経験としては間違いなくプラスでした。
ただ正直なところ、あとから「あれは受けなくてもよかったかもしれない」と思う仕事も、なかったわけではありません。
数としては多くありません。それでも、そういう一件があると、気持ちの面でも時間の面でも、ほかの仕事にまで影響が出ます。
受けないほうがいい仕事がある、と気づいた
トラブルになりやすい仕事には、なんとなく共通の匂いのようなものがあります。
最初のお問い合わせや、初回のご面談の段階で、無理な要求だったり、少し不誠実な雰囲気だったりが透けて見えることがある。うまく言葉にはできないのですが、あとから振り返ると、だいたい最初に感じています。
税理士は、お客様の申告に責任を負う立場です。
正確とはいえない資料のままで申告してほしい、と求められるような関係になってしまうと、こちらまでリスクを負うことになります。自分の資格の話でもあるので、ここは譲れません。
ですので「近づかない、受けない」は、選り好みというより、自分を守る手段だと考えています。そしてそれは結局、いま任せてくださっている方を守ることにもつながります。
断れるかどうかは、依存しているかどうか
とはいえ、断るという選択ができるかどうかは、気持ちの強さの問題ではないと思っています。事務所の状態の問題です。
私が意識しているのは、「解約になっても仕方がない」と思えるくらいには、お客様の数を持っておく、ということです。
ひとつのお客様に売上を大きく依存していると、その一件を失うわけにいかなくなります。そうなると、無理なお願いでも飲んでしまう。飲んでしまえば、さっき書いたリスクを自分で抱え込むことになります。
断る力は、精神論ではなくて、売上が分散しているかどうかから生まれるものでもあると感じています。
もちろん、解約されて平気なわけではありません。いまでもへこみます。ただ、へこんでも事務所が傾かない状態にしておくことは、自分でコントロールできる部分です。
また契約条項にはあちらからお断りすることも、またこちらからお断りすることもできるようにしています。
ばんばんその刀を抜くというわけではないですが、選択肢として持てているというのは大事です。
自分の営業は、農業に近い
では、その数をどう確保するのかというと、営業を止めないことに尽きます。
営業をしたからといって、すぐにご依頼が来るわけではありません。ブログを書いても、その日にお問い合わせが入ることはほとんどない。
半年後、一年後に「前から読んでいました」と言っていただくことのほうが、ずっと多いです。
だから私は、自分の営業(特にコンテンツ発信営業)は農業に近いと思っています。種をまいて、水をやって、育つのを待つ。まいた種の全部が芽を出すわけでもありません。
収穫のときだけ畑に行っても、当然ながら何も採れません。忙しいときも、そうでないときも、まき続けて手入れをしておく。
顧問の受付を止めているいまも発信を続けているのは、そういう理由です。畑を放っておくと、次に必要になったときに、何もない状態から始めることになります。
受けないことは、続けるための余白
受けないと決めるためにやっているのは、自分のスタンスを先に出しておくことです。合わない方を引き寄せないための、いちばんの予防になっています。
契約書も、自分からもお客様からも解約できる形にしていますし、資料をいただけないことによる不利益はお客様側の責任、という条項も入れています。
「契約書なんて読まれない」と言われることもありますが、そういう前提で構わないと思える方だけが残る、という設計として意味があると思っています。
先週書いた受付ストップが量の限界の話だとすれば、今日の話は、質やリスクでの線引きの話です。
受ける数を絞るから、いま受けている方に丁寧に向き合える。順番としては、そういう感覚でいます。
「何を受けるか」と同じくらい、「何を受けないか」を自分の中で言葉にしておく。
それが、ひとり事務所を無理なく長く続けるための余白になっている気がします。
