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専門サービス業の原価を考える

おはようございます、京都の若ハゲ税理士ジンノです。

税理士は専門的な知識を提供しサポートする専門サービス業だと考えています。こういうと原価がないビジネスっていいですよね(うらやましい)といわれることもしばしばあります。

タダで税理士資格を取得できたわけではもちろんないのですが、外から見るとそう見える、こともあるということで。

専門サービス業の原価ってあるのか少し考えてみます。

 

利益計算上の原価

焼き鳥屋さんを例に考えてみますと、焼き鳥屋さんは原価があるビジネスです。利益計算上においてもおカネの流れにおいても。

 

焼き鳥に使う材料として鶏肉、鶏ミンチ(つくね用)、野菜(ネギま用)など実際にくしに刺して焼く材料が存在します。

こういったものは原価として仕入れに計上し、利益計算上の原価を構成しています。単純に売上-売上原価=売上総利益という計算式です。

 

この売上総利益から販売費・一般管理費といって事業を続ける、行うために必要な費用(人を雇っていれば人件費、広告を出せば広告費、テナントを借りれば地代家賃、などなど)を差し引いて営業利益を計算して、という流れになります。

 

対してサービス業はというと何か具体的なモノを仕入れて加工したりそれを流通させたり、また一次産業のように育てたり、という目に見えるモノが基準ではなく目に見えないサービス(役務ともいいますね)を提供します。

売上から差し引く売上原価はないわけですので売上=売上総利益となりますが、販売費・一般管理費は同じく存在しますのでこの後の流れは同じです。

 

利益計算上で見るとサービス業はモノを仕入れることがありませんので売上総利益率(粗利率とも言います。売り上げに占める売上総利益の割合)が100%です。

つまり利益計算上だけで見ると原価はないことになります。

 

売上=売上総利益ということになり、決算書上は原価がないビジネスになります。

では実際に専門サービス業を行うものの肌感覚として原価がないか、と聞かれると「ある」と思っています。それは広い意味での原価という意味です。

 

広義の原価

では税理士業を含む専門サービス業の広い意味での原価がどういうものか、もう少し引いた視点で見てみましょう。

 

まず一番最初に思い浮かぶのが資格を取得するのにかかった費用です。

税理士試験の場合は独学オンリーで合格するのは難しく専門学校の授業を受けつつ受験する方が圧倒的多数を占めます。

 

例にもれずぼくも9年間にわたり専門学校の教材を使って受験を重ねましたが、一年でだいたい20万円ぐらいは授業料・教材費でかかりましたので20万円×9年=180万円と単純計算できます。

 

この180万円の金額は利益計算上の原価にはなりませんが、税理士になるためにぼくの場合必要だった金額(ひとにより合格まで早い遅いはありますので金額は異なります)です。引いた視点で見ると税理士資格がないといまの仕事は困難なわけですから必要な費用であり原価と言えるかなと。

 

もうひとつすぐに思い浮かぶのは税理士資格を登録し維持するための費用です。

こちらも物を買うわけではなく資格登録にかかる費用で所属する税理士会にもよりますが登録時に大体20~30万円かかります。

 

この金額を支払わないと税理士として登録できないわけですから税理士として仕事をしたい場合の必要な支出です。

登録時にこの金額を支払いあとは毎年所属する税理士会に年会費を払い(大体8万円ぐらい)と所属する支部の年会費(大体3~5万円ぐらい支部により異なります)が必要です。

 

これらは税理士として仕事をするに際して必要な費用で厳密な意味で原価ではないですが、登録維持のために必要な支出なので原価に近いイメージを持っています。

 

税理士として登録し資格の維持に必要な支出とは別に、知識をブラッシュアップし勉強するための費用が必要です。

税理士試験の受験勉強という意味ではなくこちらは税理士である限り継続して学んでいくことで知識を習得ブラッシュアップすることが目的です。

 

税制は毎年細かく変更がありますし、裁判や裁決により見方・解釈が変わる部分もでてきます。知識を最新のものにアップデートすることが専門サービスを提供する身としては必須です。

 

事業者のかたがお仕事相手になることが多い税理士業ですから税金・会計に関する専門的な知識はもとより、顧客の専門分野や税務会計とは違ったコンサルティング的な部分の知識習得も考えたいところです。

こういったことに必要な研修参加費用、書籍代、新聞代などは実際のモノというよりも提供するサービスの質の維持及び向上のために必要な支出で、専門サービス業が知識を提供する側面があることを考慮すると、実際に従事する身としては原価に近い感覚を持っています。

 

利益計算上という狭義の意味では専門サービス業の原価はありませんが、広義の意味ではそれにかなり近い支出はあると考えています。

 

時間も原価と考えてみる

タイムチャージでお仕事の対価をもらうケースにおいても同様です。

例えばスポット相談60分だとするとこの時間についてだけ報酬が発生している、というわけではなく前準備がいろいろとあります。

 

資料を実際に作るケースであれば資料を作成する時間、調べ物をする時間、推敲する時間がかかります。

また一緒に作業をする、ぼくで言うと確定申告作業を一緒に行うみたいなときにはその作業工程を実際に自分で一度体験し整理しておくなどの時間が必要です。

 

タイムチャージで提供している時間以上に実は準備段階で時間がかかることもしばしばあり、そういう意味ではその時間の準備も原価と言えば原価です。

 

最終のプレゼン、サービスの提供時以外の時間についてはその時間のための時間であり、準備であり、実際のモノではないですが原価に近いかなと。

 

60分のセミナーであれば練習60分、資料60分などセミナーを提供する時間に対しての時間をかけて行く必要があります。

これはどんな業種でも同じことが言えて、冒頭の焼き鳥屋さんでも串うち(焼き鳥の原材料を串にさす工程)の時間などの仕込みの時間があります。

 

その時間分は決算の数字には表れてきませんが原価として意識しておいたほうがいいでしょう。

 

数字を考えるキッカケになる本



まとめ

専門サービス業はいかんせんモノがないぶん実感がしにくいようで通常の小売業だとあり得ないことをいわれることがあります。

原価がかかっていないわけでは決してないですし利益計算上、決算書上の見え方というのは一側面でしかないです。

原価を意識した事務所運営を心掛けていきたいところです。

 

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