相続時精算課税を選択するその前に。

お金

nattanan23 / Pixabay

贈与の種類の一つに相続時精算課税制度があります。

最近、安易に選択して痛い目にあったお客様がいましたので

注意点をまとめました。

2,500万円まで贈与税非課税の魔力

贈与税の非課税枠は、よく知られている通り110万円です。

110万円までは贈与されても非課税なので、

コツコツと贈与している方も多いです。

財産が非常に多い場合には

相続税率と贈与税率との比較で110万円ではなく

もっと多くの金額の贈与をしている場合もあります。

ただ皆に共通なのが110万円の非課税枠です。

この非課税枠が多くなりますよ、そんな魔力のある言葉があります。

相続時精算課税制度を選択すれば2,500万円まで非課税です。

毎年110万円をコツコツ贈与しているかたからすると

なぁーんだ、じゃあその贈与にしましょう、となりがちです。

ただし大きな落とし穴がありますので、

決して2,500万円に惑わされないために注意喚起します。

一度選んだら途中でやめられない

相続時精算課税制度は、贈与税の申告と一緒に選択することで適用できます。

この選択がキモです。

表題の通り、相続時精算課税制度は一度選択すると途中でやめれません。

他の制度であれば途中で撤回することも出来る場合が多いですが、

この相続時精算課税制度は、後でやめれません。

贈与するひと、または贈与されるひとが亡くなるまで一生涯継続されます。

そして2,500万円の枠を超えたら一律で20%の贈与税がかかります。

ここまで説明しても、躊躇しないひとがたまにいます。

途中でやめれないことの怖さが分かっていません。

この次を読めば踏みとどまりたくなります(笑)

読んで字のごとく精算する

相続時精算課税制度とは読んで字のごとくです。

要は、相続の時に精算して課税しますよ、と読み替えることができます。

そして課税されるのは相続税です。

相続時精算課税制度で贈与していたひとが亡くなった場合、

そのひとから相続時精算課税制度で贈与されていたひとは

相続で財産をもらおうと、もらわまいとに関わらず、

その相続時精算課税制度で贈与された財産を全て足し戻します。

全てです!

通常の贈与であれば、生前贈与加算適用で亡くなった日から3年以内の贈与のみを

相続財産に足し戻すのみです。

そしてコレは相続・遺贈で財産をもらったひとにしか適用されません。

でも相続時精算課税制度は違います。

相続・遺贈で財産をもらっていなくても相続財産に足し戻します。

要は、贈与税は2,500万円までかかりませんが、

最終的に相続税が課税されるという事です。

今、贈与税がかからないことと、

将来相続税がかかることの天秤の重さは全く異なります。

そして、最悪なのが

相続時精算課税で財産を贈与されたことを忘れている場合。

この場合、この足し戻しをせずに相続税の申告をすると

まず間違いなく税務調査になります。

だって財産が漏れているんですから。

仮に2,500万円まるまる足し戻せていなかった場合には

相続税は何百万にもなることがあります。

さらに延滞税などのペナルティが山ほどかかります。

税理士としても注意すべき点なので

もちろん相続人のかたにヒアリングしますが

バレないと思っているのか、忘れているのか。

ハッキリとそんな贈与ないです、と言われることも。

税理士としてのリスクマネジメントとして

そんな贈与ないです、という内容の覚書に署名・捺印をいただくこともあります。

それほどまでにリスクが高いものであることを覚えておいてほしい、その一心です。

まとめ

もちろん、相続時精算課税を選択したほうが有利な場合もあります。

ただ、かなり限られると考えましょう。

それこそ、絶対に値上がりすると見込める財産であったり、

相続税率がそもそも最高の55%かかるなどの場合でなければ

選択することのメリットはないです。

選択したい場合は税理士とよく相談しましょう。

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この記事を書いた人

ひとり税理士として独立開業した京都在住の税理士です。ひとり税理士としてチャレンジしていること、考えていることなどを発信していきます。

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